若手教員は弱い立場にある?


【テニュアトラック】
日本でも最近テニュアトラック制度が導入されています。テニュアトラックとは、審査期間(大抵6年以内)に独立した研究者になりましょう、と促す制度であり、初年度に大きな研究費と自由な時間を与えられ、シニア教授がメンターとしてつきます。そして、ラボを立ち上げて、論文執筆をして、中間審査までに研究費を取って来たらまずOKという感じです。最終審査までに大きな研究費を取って来たら合格、あなたなら十分に独立して学生指導できる、パーマネントの職を与えよう、というものです。

しかし、日本で導入されているテニュアトラックは、まず数が少ないです。運営交付金が少ないために、基本的に任期制の職(特任助教など)が中心で、パーマネント前提のテニュアトラックを準備できないのだと思います。また、テニュアトラック採用後は、テニュア獲得率が高いです。応募人数および博士人材が少ないため、審査基準が低くなっていることが一因かもしれません。結果として、独立できているかではなく、自力で論文を書けているか程度の審査となり、テニュアトラック助教の仕事が、米国のポスドクの仕事に近くなっている場合があります。国際的にはテニュアを取ると准教授ですが、日本ではテニュア獲得後も助教の場合もあります。

テニュアトラック制度の理解が不十分で、助教側がワガママを言っている場合があります。「自分の設備がなければ、独立なんてできない」とか「テニュアトラック中は授業を免除してほしい」とか、です。え?なぜ、テニュアトラックに応募したんですか?事前に大学周辺設備を調べた上で独立できると思ったから、応募したんじゃないですか?大学に雇われているのだから、授業などの大学のタスクをするのは当然です。研究だけしたいのであれば、研究所に行くべきです。成果がでないのは、メンターや大学が悪いのではなく、あなたのマネージメント能力が低いのでは?テニュアトラックに自信がないのであれば、事前にポスドクや特任助教の仕事に就いて、研究費獲得や学生指導の経験を積むことをお勧めします。

一方で、教授がメンターの域を超えて、こちらの研究活動に口出ししてくる場合があります。特に、教授の装置を借りる場合は要注意です。対等な立場が崩れる、というリスクを念頭に入れておくべきです。教授の研究以外のことしたり、さきがけに応募しようとすると、「僕から離れる気?僕の研究を引き継がないならテニュアあげないよ」と言われた例があります。「業績不十分だけど今回テニュアを出すよ。でも、この大学では准教授にはなれないと思って」と言われた例があります。ひどいケースでは、テニュア審査時に大学運営側の人間が変わっている場合です。テニュア獲得条件が途中で変更されたり、採用時はテニュアトラック分のテニュア枠があったのに、途中で枠が減らされたことで、当初のテニュア獲得条件を満たしているのにテニュアを獲得できなかったりするようです。事前に書類を交わしたり、録音したりしておきましょう。


【研究費の利用】
大学によっては、メンターの教授と同じ電子会計システムに登録されている場合があります。このシステムを利用して、教授が勝手に助教の予算を使う事例があります。助教を研究代表者にして、若手研究者用の予算を獲得し、教授が使うケースもあります。どちらもスポンサーを裏切る行為です。


【個人的意見】
指導教員に「常に誠実でいなさい」と教わったこともあり、私は、間違っていると思ったことは、相手が権力者でも正直に自分の考えを伝えています。完全に独立している(若手教員の中では強い立場にある)私が反対意見などを述べないと、それより弱い立場の人や私より若い教員は、日本では自分の意見を言い出しにくいと思うからです。例えその時不利な立場になっても、長期的には強い味方が付くと信じて、自分に誠実に行動しています。勇気を出して発言しても、結果的に、プラスに働いてもマイナスになったことはないです。見ている人はちゃんと見ているということだと思います。

海外では、「テニュアが取れた」と言えば、レストランでパーティ開いてくれるし、忙しい教授たちもお祝いメールをくれるようです。それだけ、テニュアは厳しく、そして獲得する価値のあるものなわけです。幸せなことに、私の場合は、日本ですが、完全に独立できています。ほんと良いメンターでした。

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