6-2. 居室デザイン

はじめに

研究室が何を重視するかで、レイアウトや置くものも変わってくると思います。都心部では部屋面積が小さい(3 m x 3 m)ですが、都心から離れると10 m x 10 mとかもあります。一部屋当たりの人数はどこも3~4人が多いようです。日本では、全学生(10人以上)が一部屋にいる場合をよく見ます。
図1:アメリカでよく見る研究室
部屋のレイアウトは無料でシミュレーションできます。私はここを使ってみました。図1のように、3 m x 3 mの部屋に3人では窮屈に感じると思いますが、まだ許容されます。しかし、流石にデスクを入れることができたとしても、4人で活動するとなると周囲が気になって研究効率が下がると思います。1人あたりのスペースは1.2 m x 2 m(机のサイズは0.7 m x 1.2 m)くらい確保したいです。これ以下だと、狭く不快に感じてしまいます。通路幅として1 mくらい取っておけば、通るたびに「すみません」と言わなくてすみます。

オフィスレイアウト

オフィスのレイアウトはココが参考になります。座学を重視するのであれば、仕切り付きのデスクで壁向きに配置するのがいいと思います。アイデアを重視するのであれば、デスクをなくして、カフェのようにソファのみにしてしまうのも一つです。

図2:同向式(背面式、スクール式)。理論系ラボにお勧め

大学の研究室のレイアウトとして、壁にデスクが向いた「同向式(背面式)」が多いように思います。狭い部屋に多くの学生を配置できるレイアウトです。お互いの視線が気にならず、勉強や仕事に集中できるので、理論系の研究室では特に好まれると思います。コロナ感染対策を考えると、この配置にして、机の間にパーテーションを入れるといいかもしれません。さらに、窓がなくても、ドアの前に扇風機をドアの方向に向けて置くと、部屋の換気が良くなるそうです。

図3:対向式。実験系ラボにオススメ

実験系の研究室では、装置のトラブルや改良などで学生同士がコミュニケーションを取ることが多いため、「対向式」が魅力的です。通路が共通でない分、同向式よりもやや広いスペースが必要になります。コンセントの数と場所は、結構重要です。延長コードを天井に這わせると、床にケーブルが散乱しなくて済みます。マグネット式の延長コードを使えば、デスクに貼り付けられ、床を這うケーブルを完全になくせます。

企業のR&Dや研究所では、パネルの低い「ブース式」がよく見うけられます。企業ではスペースを広くとれるのもありますが、基本的に個人でプロジェクトを遂行するからだと思います。大学の研究室で、個々の席を設けない「フリーアドレス式」は見たことがありませんが、校費が少なく研究室の人数の増減が大きい場合には有効かもしれません。

小規模オフィスのレイアウト例
Office&Co.Pinterest

オフィスに置くもの

学生の居室にあると便利なものは以下です。
  • デスク・椅子
  • PC・モニタ
  • コピー機
  • 電話
デスクの幅は1.2-1.4 mが一般的です。アメリカ西海岸の大学ではこれより広いケースが見られます。客員研究員用のデスクも1.6 mくらいあると良いです。奥行きは0.7 mはほしいです。デスク上の棚は、対向式レイアウトでコミュニケーションを重視するのであれば不要だと思います。代わりに、サイドワゴンがあると便利です。

PCは、理論系の研究室では処理速度の速いデスクトップ(タワー)だと思いますが、実験系ではラップトップやミニPCでもいいと思います。実験データをCDで管理する場合は、All-in-oneもスリムでいいです。モニターは20インチあれば十分でしょう。デュアルにすると仕事効率が上がると思います。ウイルスソフトとwi-fi環境は必須です。実験データの取得にUSBを使うとウイルスが拡散する可能性があるので、クラウド環境も整えるといいでしょう。卒論データのバックアップにはNASが便利です。大学でサポートしている場合もありますが、Windows office、Matlab(計算)、Labview(装置制御)、Adobe illustrator(描画)、Origine(グラフ)、Mendeley(論文閲覧)といったソフトの購入も検討してみましょう。

コピー機は、インクジェットよりも印刷速度の速いレーザープリンターがお勧めです。卒論・修論の時期は、印刷枚数が非常に多いです。スキャナ機能が付いている複合機であれば、物品の発注時にPDFで送れるので便利です。予算に余裕があれば、業務用をリースするのも一つです。メンテナンスを電話一本で行ってくれます。書類や試料整理には、ラベルプリンタがあると便利です。

今や一人一台スマートフォンを持っていると思いますが、オフィス用に電話を設置しておくと、学生は物品発注時に自費で電話せずに済みます。また、企業の勧誘連絡が自分達の携帯電話にかかってこない、週末まで仕事に追われる心配がない、というメリットもあります。緊急時に施設のどこにいるかを把握するため、実験中に学生に子機を持たせるのもいいかもしれません。個人的にはFAXは不要だと思います。全てPDF+Eメールで対応可能です。

日本で研究室運営する際には、地震という災害からは離れられません。地震や火災対策のため、棚の固定や逃げ道の確保を考慮しておく必要があります。懐中電灯、ライター、ろうそく、寝袋、アルミシートといった避難具もあると良いかもしれません。

オフィス用品業者
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個人的好み

図書館のように、分野を問わず幅広い書籍をたくさん置きたいです。学生が気晴らしに異分野にも興味を持ってほしいからです。また、机の上の書類は整理されていてほしいので、収納・本棚を多めにしています。目線より高い棚を多数配置すると、圧迫感を強くしてしまうので、なるべく小物は棚ではなく、壁掛け収納を利用しています。メタルラックが安くてお勧めです。

学生同士が自然と議論し合える環境が最も喜ばしいので、壁一面にシート状のホワイトボードを設置しています。ホワイトボード前には、人が集まれるようになるべくスペースを確保しつつ、コーヒーを飲みながら立って議論しやすいようにバーテーブルを置いています。ソファは、一度座ると立てなくなり、グダグダな生活になってしまうため、置いていません。また、onenoteやSlack、Zoomを使って、オンラインで気軽にアイデアを出し合えるようにしています。ペン付きタブレットは便利そうですね。ほしいです。

居室はオフィスと同じなので、漫画、一般の雑誌、テレビは置きません。リフレッシュルームには置いてもいいかなとは思います。一方で、学生達には快適なオフィス生活を送ってほしいので、生活用品は置いています。
  • 本棚、ロッカー、ゴミ箱、ハイデスク、コートかけ、靴箱、傘立て
  • 冷蔵庫、電子レンジ、湯沸かし器・コーヒーマシン
  • 空気清浄機(加湿器)、掃除機
  • 大きな時計、文房具、プロジェクター、カメラ

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